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cruel ability
第一話 彼の名は……
ある雪国の街に、11年ぶりに訪れる少年がいた。外見から見れば大人に見えるのだが、実際はまだ14歳の少年。
11年前一度親に付き合わされて来たことがあるだけで記憶はほとんど残っていない。その親も、今は残ってはいない。
容姿端麗ではあるが幼さはかけらとして残っていない顔立ち。身長は180センチメートルぐらい。
腰には細く短めの柄に2メートルほど刃渡りがある剣が鞘にしまわれて腰にセットされている。とはいうものの長さが通常ではないために背中にまわして横に倒してセットしている。更に鞘から剣を抜く際に抜きづらいため鞘の半分くらいから上下の部分が無理矢理切り取られている。
服装はカノンガーデンの制服の上に黒いマントが覆っている。
その少年の名は霧島繁といった。今日からカノンガーデン高等部に編入をする生徒である。
今まで自分の思うままに旅を続けていた。親は繁が4歳の時に死んで亡くなった。それからはただひたすら歩き続けて旅をしていた。
10歳になるとギルドに参加するようになったが、ギルドにはランクがありそれはガーデンに通うかまたは、よほどの実績を上げなければランクアップしないため、今は最低レベルからひとつあがったばかりのランクはC-である。
そのため低い収入で旅を続けてきていたのだった。
ギルドではランクが高い者には難度の高い仕事を与える。その分給与も高いが低い者に対してはランクが低いのだから難度の低い仕事を与えもちろん給与も少ない。
因みにギルドランクはガーデンなどでつけられる戦闘力の強さのランクと同一のものである。
そのランクは低いほうから、D、C、B、A、S、SS、SSS、となっている。そのランクの中でも強い者は+ が追加表示される。逆に入りたてだったり弱い者は- が追加表示される。この世界の中には伝説のランクとされるものがあると噂されるが、真偽は定かではない。
繁は今までガーデンに通ったこともなかったが、ギルドで会った少年からその少年が通っているガーデンの話を聞き、面白そうだと思い、ランクの件もあるためにガーデンに編入することを決めた。
カノンガーデンのあるこの街は、世界一の都市とされるカノンである。
世界一とは言うものの機械技術などが発達していないためビルが立ち並ぶなどということはない。
その上この街カノンは南以外一年通して雪の降っている山に囲まれているため南にしか街の出入り口はない。街にも一年の半分は雪が降っている珍しい街である。
「歩くの疲れた……」
雪の積もった道を歩き続け、南の門をくぐったところで急に繁がぼやいた。
隣の街からではなく四つほど離れた街からやって来たため、流石に疲れはたまっていた。
鞘から剣を抜き、鞘を下に放り投げた。するとその鞘は横長の板に変わった。これも魔術である。
「俺を乗せてガーデンまで移動。後は頼んだ」
そう板に話しかけると驚くことに板から声が聞こえた。
『はい。ですがガーデンに着いても起こしたりはしませんよ』
だが周りにいる人間は何も不審には思っていない。
それは何故か? 誰にもその声が聞こえていないからである。
「任せろ」
何を任せるのはわからないが、繁は板に返事を返して板の上に座った。胸のポケットから煙草とライターを取り出して火を点けてから携帯灰皿を取り出す。
板がゆっくりと空に浮かんでガーデンの方向へと飛んでいった。
繁が普段使っている鞘は板に変化した。だがその鞘も変化していた形で本来の姿は違う。
世界に7人存在すると言われる精霊だったのである。
精霊のことはほとんどの人間が実物を見たことのないためにおとぎ話とされているうえ、更に精霊を従えるには人並み外れた実力と魔力が必要となる。
実力は、精霊の居場所までたどり着くことは出来ても精霊が認めるほどの実力がなければならない。
魔力は、精霊が持つ力を抑えることの出来る魔力が必要なのだ。それに必要とされる魔力は非常に莫大なものなのだが、消費するわけではないので支障はない。
だがこのことは実際精霊を従えることに失敗して死してしまった者と実際従えているものしか知らない。その他の人間には知られてもいないし教えても信用されないだけだろう。
精霊の話自体がおとぎ話とされているため、実際に7人いるのか、それ以上なのかはわからない。
それほどの存在の精霊を繁は従えていた。
繁の従えている精霊は水の精霊で、名を持っていなかったため繁がしずくと名付けていた。
しずくは普段変化してその正体を知られないようにしているが、たまには人の姿になることもある。
繁としずくがガーデンについた時刻は午前五時半だったのだが、いつの間にか登校時刻の七時半から十分前になっていた。
それは何故か? 繁がずっと板の上で寝ていたからである。
しずくも丁寧にずっと起こさずに寝かせたまま、校門を入ってすぐのところで着地している状態で待機していた。
だが、それは異様な光景であり数十分ぐらい前から段々と生徒が登校している途中で繁のそばで立ち止まって妙な目で見ていたり避けて通っていたりしていた。
立ち止まっている人達からはひそひそと声も聞こえていた。
しずくも何故か恥ずかしくなってきて流石にそろそろ起こそうかと迷っていると、急に大きな声が聞こえた。
その声の源はすぐ近くに迫ってきていた人達だった。どうやらこんな目前まで迫るまで気づいていなかったらしい。
しずくは板に変化したままひっそりとそっちに目を向ける。
「うおっ、なんだこいつ」
茶髪の男の人の声。
「関わらないほうが良さそうね」
茶色のウェーブがかかった髪の女の人の声。
「そうだね。可哀想だけど……」
青くて長い髪の最後のほうだけ声を潜めた別の女の人の声。
もう一人隣に金髪で髪が一部立っている男の人がいたけど何も言わず見ていた。
「んっ〜……あぁ。ふぁ〜。おはよう」
その声で目が覚めたのか、急にこんどはしずくの主の繁の声がした。
思い切り体を伸ばしてから無意味に挨拶をしてから起き上がる。ふと前を見ると人がこっちを見ていて、右に左に目線をそらすと周りに人だかりが出来ていたことに気づいた。
すると後頭部に手を当てて、
「でへへ〜……どうも〜、では〜」
と言い捨てて板を持って走り出した。
走りながら板を鞘に変化させて剣をその中にしまった。しまい終わるころには昇降口ついていて、今度はマントを脱いで無理矢理ポケットに突っ込んでそのまま職員室へと走った。
職員室に着くころには登校時間ぎりぎりで、足をゆすりながら職員室の前で立っている教師がいた。
「すみません、遅れました。今日編入の霧島繁です」
悪気のないような声でその教師に言った。
それを待ち構えていたかのようにそれを聞いてすぐに歩き出した。
「早く行くぞ。俺はお前の担任になる石橋だ」
石橋の背中にはホルダーがついていて斧がセットされていた。柄の部分に解読できない文字が書かれていること以外は普通の斧だった。
繁はそれに疑問を覚えたが、特に何というわけではないので気にしないでおくこととした。
教室につくと、廊下で待っているように言われ石橋だけが教室の中へ入っていった。
中からは恐らく仲間同士で騒いで談笑しているだろう声が大量に聞こえてくる。その中から石橋の発した大きな声が聞こえた。すると話し声が止んだ。
「編入してきた生徒がいる」
そう石橋が言うとさっきよりも話し声が騒がしくなって廊下に聞こえた。
石橋が目線をこちらに向ける。入って来いということらしい。
それを受けて頷いてからドアを開けて入ろうとする、が。
ガンッッ!
『痛いです繁様…………』
「すまない……っしょっと」
剣の長さがドアを通らないのを気づかずにそのまま直進したのである。
ドアに通らなく壁に剣がぶつかり、繁は転びそうになりしずくは痛みを訴え教室の中の生徒は笑ったりしていた。石橋は教卓にひじを立てて頭を抱えていた。
しずくに謝りながら剣の向きを変えて改めて教室内に入って教卓の隣に立つ。
石橋に促され自己紹介を始める。
「きりしましげるです。よろしくお願いします」
男子だから残念がられるのかと本人は思っていたがそういうことでもなかった。
さっきの登場の仕方がよっぽど印象的に残ったのかほとんどの人間が笑顔で迎えてくれた。
「お前の席は空いてるところに適当に座ってくれ」
急に横から石橋の声が聞こえて内心で驚きながらその言葉にも更に驚いた。
窓側の席が空いていたので言われたとおり適当に座らせてもらおうとしてまた刀がぶつかる。
『痛いです……』
剣を腰から外してぶつけたところを少し撫でてからゆっくりと座った。
席に座ってからは落ち着いて石橋の話を聞いていたのだが、しずくが繁様、繁様、と呼びかけていた。
横にたてかけてあった剣の鞘を見ると視界の端に朝見たことのある顔があった。
『朝私達を見ていた人です……』
それを聞いてもう少しだけその男のほうを見ると声をかけられた。
「お前一体何だ? 」
「ゃ、どう答えりゃいいんだよ」
自分の後ろの席にいた人間は朝ガーデンの門の近くで起きたときに目前にいた茶髪の男子だった。その横を見ると青い長髪の女子がいる。また、後ろには金髪の男子がいてその隣には茶色のウェーブがかかった髪の女子がいた。
茶髪の男子がまた声をかけてきた。
「俺は相沢祐一だ」
「知ってる」
「何だとぉ〜!? 」
普通に応答してもつまらないと思いふざけた返事を返すと期待以上の派手な芝居がかったわざとらしい台詞が返ってきた。
繁は祐一を面白い人間と認識する。
隣の青い長髪の女子は呆れていた。茶髪でウェーブがかかった女子も同じである。
すると今度は金髪の男子から声がかかった。
「俺は北川潤だ」
「俺は霧島繁だ」
「なんで俺の周りにいるやつはみんな変人なんだ」
今度は北川も呆れた。
「私は水瀬名雪だよ」
呆れている状態から復活した青い長髪の女子が言った。
「私は美坂香里よ」
同じく呆れている状態から復活した茶色のウェーブの髪の女子が復活して言った。
「俺は相沢祐一だ」
「いやだから知ってるって」
祐一の言葉にすぐに突っ込んでから苦笑いした。
繁は確かにガーデンも良いかもしれないと思った。こうやって人と話すのも久しぶりで、それが懐かしいのではなくむしろ新鮮で、楽しい。何よりも楽しく思えるのが一番だった。
朝のHRが終わると繁はすぐに席を立ち上がりベランダに出た。しばらく柵に体を預けてぼーっとしていると北川も横に来て景色を眺め始めた。
『良かったですね繁様』
いきなりなにを、と繁は思った。それをわかってかわからずかしずくは話を続けた。
『次は戦闘訓練の実戦だそうですよ』
それを聞いて急に、
「次さぼるかな……」
と言って胸ポケットから煙草を取り出して火を点けてから吸い始める。
教室にはもう誰もいなく、しずくが言うには訓練場に向かったということらしかった。
北川だけが隣にいて、あとは誰もいない。その北川が苦笑いしながら繁の独り言に返事を返した。
「さぼるんなら一緒にさぼってやるぞ」
言ってからガーデンで煙草は制限されないが抑えろと忠告して教室に戻って廊下に出た。
その後一旦戻って来て
「最初の授業だろ。来いよ」
と言った直後にチャイムがなった。
結局繁は煙草の火を消してから北川のほうへかけていった。
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S!S!S!より
yuiさん!投稿ありがとうございます!
ファンタジー小説!次回は戦闘っぽい!!繁がどんな戦いをするか、楽しみです!!
感想は僕に送ってくれれば、ちゃんとyuiさんにお伝えします!